MCTオイルの成分である中鎖脂肪酸と、ケトン体の密接な関係性について説明します。
ケトン体とは、肝臓で作られる、脂肪を分解して生成されるエネルギー物質のことをいいます。通常のエネルギーは、体内のブドウ糖を使用し、そのブドウ糖が無くなったときに、第二のエネルギーとして生まれるのがケトン体です。
MCTオイルの主成分でさる中鎖脂肪酸は、油の一種でありながら、他の脂肪酸と異なり肝臓に直接取り込まれて超スピードで分解される(※1)ことが分かっています。その素早い分解によって、ケトン体が生成されます。
ケトン体は、体内のブドウ糖が無くなった際に生成されると先に説明しました。しかし、MCTオイルを摂取すると、ブドウ糖か体内に残っていたとしても、優先的にケトン体が作られるのです。
MCTオイルの主成分である中鎖脂肪酸を用いたビスケットと、一般的なオイルである長鎖脂肪酸(LCT)を用いたビスケットを摂取した際の人体への影響を比較した研究(※2)があります。
そこでは長鎖脂肪酸ビスケットの摂取ではケトン体の上昇に大きな増加は見られませんでした。しかし、中鎖脂肪酸ビスケットを摂取した場合、2時間後、4時間後ともに、摂取前よりケトン体の数値が有意に上昇した結果が出ました。
先に説明したように中鎖脂肪酸が素早く分解されるということは、MCTオイルの油は体内に溜まりにくいということです。
先ほどのビスケットの研究で、中性脂肪の変化の違いについても結果が出ています。長鎖脂肪酸ビスケットを摂取した場合は、血中の中性脂肪の数値が4時間後に1.8倍まで増加しました。しかし中鎖脂肪酸ビスケットは、摂取前後で中性脂肪の量に大きな差が出なかったのです。(※2)
ケトン体を生成する力が高まると、身体はいわゆるケトン体質となり脂肪を燃焼しやすい環境に変わります。ケトン体質になると、体内からブドウ糖が減るため脂肪の燃焼が活発になります。さらに消費するエネルギーも増えるため脂肪の分解が促進され、結果としてダイエット効果に繋がるというわけですね。
実は、ブドウ糖が減少すると脳の活動が低下してしまうことが分かっています。これが低血糖の大きな問題点なのですが、ケトン体は全体の60%程度がブドウ糖の代わりとして脳の栄養に使われることが分かっています。ですから、低血糖のリスクであった脳の機能低下も抑制できるとされています。
本記事は、以下の文献を参考にしました。
※1[PDF]青山敏明「中鎖脂肪酸の栄養学的研究 最近の研究を中心に」『オレオサイエンス』3巻(2003)8号 p.403-410,386
※2[PDF]倉賀野妙子,和田淑子,花崎憲子,大喜多祥子,田中明「中鎖脂肪を用いたビスケットの単回摂取による血中脂質・血糖値の動向」『栄養学雑誌』66巻 (2008) 6号p.287-294